平成 11年 11月 29日
                         建設省住宅局建築指導課
 
○ 建築士の処分基準に関するパブリック・コメントの結果について
 
 建設省では、平成11年10月7日建築士の処分基準に関して公表を行い、広くご意見の募集を行いました。                (→改正案概要
 今般、その結果と、お寄せいただいた意見(23件)に対する建設省の考え方を取りまとめましたので、公表いたします。(寄せられた意見については、とりまとめの便宜上、適宜集約のうえ公表させていただきました。)
 なお、本建築士処分基準案自体に対するご意見というよりも、建築士を処分する際の事実認定に係るもの、具体の案件についての対応の仕方に係るもの、建築基準法等法令に係るものなど、本建築士処分基準案に直接関係ないと考えられる意見については取りまとめておりません。
 また、今回貴重なご意見等いただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げますとともに、今後とも建築士行政の推進にご協力いただきますようお願い申し上げます。
 
[建設省に寄せられた意見等とそれに対する建設省の考え方]
 以下、 頂いたご意見の概要 = Q
     建設省の考え方   = A と表記します。
 
 
Q 各事項につき、厳しすぎるあるいは緩すぎる。
A 双方のご意見がございましたが、今回の基準案につきましては、現行基準に 基づく過去の処分事例・他の国家資格の処分事例等を参考に、その処分ランク を決定し、処分の具体化・明確化による処分の強化をその主眼とするものです ので、従来の処分と比べて、また、他の国家資格等と比べ、極端に緩やかにす るとか、極端に厳しくするとかいうことは平衡を欠き、困難でありますので、 原案どおりとしたいと考えますが、今後とも必要に応じ、本基準をより妥当な ものとしていきたいと考えております。
 
Q 情状については不誠実行為についてのみ考慮すべきでは?
A 法令違反行為についても、その程度、悪質性、常習性、既遂か未遂か、建築 士の関与の程度など、考慮すべき情状は存在するため、法令違反行為について も考慮すべきであり、また、それにより、より適正・妥当な運用が図れるもの と考えます。
 
Q 情状として考慮するものとして、どのようなものを想定しているのか?
A  主なものとしては、以下のものを想定しております。
 ・ 是正(損害填補)に対応せず             
 ・ 重大な悪意あるいは害意に基づく行為         
 ・ 常習的に行っている場合                 
 ・ 違反行為につき未遂で終わった場合         
 ・ 積極的かつ速やかに是正(損害填補)に対応     
 
Q 故意・過失の認定、情状の考慮、処分ランク中幅のあるもの等については、 どのような扱いとなるのか?
A 個別の事実認定、違法性、悪質性等によりに判断することとなりますが、建 築士の処分については、建築士法に基づき、聴聞・建築士審査会の同意など慎 重な手続が法定されておりますので、このような手続を経て個別に決定するこ ととなります。
 
Q 処分ランク表でランク表示しているのであるから、過去に処分等受けた場合 についてもランク表示とすべきではないか?
A ご指摘のとおり、過去に処分等受けている場合の表については以下のとおり
 とします。
 





 
   過去処分等
今回相当処分等
  1
文書注意
 2
戒 告
 3〜15
業務停止
  16
免許取消
 1文書注意+1ランク
(+2
 ランク)
+1ランク(+2ランク)
 2戒  告+3ランク(+4ランク)
 
3〜15業務停止
 16免許取消 免許取消





 
  *過去の処分事由が今回の処分事由と同じ場合は、( )内の処分とする。ただし、過去     の処分事由が重大な違反に該当し、今回も「重大な違反」に該当する行為をしたときは、   免許取消とする。
  *過去に処分等を2回以上受けている場合は、それぞれにつき加重されるランクを合計し、   今回相当とされる処分等に加重する。
 
Q 「過去の処分事由が「重大な違反」に該当し、今回も「重大な違反」に該当 する行為をしたときは免許取消とする。」というときの「重大な違反」は処分 ランク表上「重」と表示されているものに限定されるのか?
A ここでいう「重大な違反」とは、処分ランク表上「重」の表示有るもののみ ではなく、それと同等の違反行為であり、「その他法令違反」として、処分ラ ンク6以上に相当するものも含みます。
 
Q 設計及び工事監理の業務範囲の逸脱とは?
A 建築士が建築士法3条から3条の3の規定に定める設計又は工事監理の範囲 を逸脱してそれらの業務を行った場合。
 
Q 違反設計とは?
A 法令又は条例の定める建築物に関する基準に違反する設計を行った場合。
 
Q 無断設計変更とは?
A 建築士法19条に定める設計変更の規定に違反する場合。
 
Q 名義貸しとは?
A 建築士が、業務を行う意思がないにもかかわらず、自己の建築士としての名 義を、他人開設に係る建築士事務所の管理建築士として使用することを許した り、建築確認申請等における申請代理者、設計者、工事監理者等として虚偽の 記載を許す等、名義を貸すことにより法令違反を幇助するような場合。
 
Q 必要な中間検査合格証を受けずに工事続行を容認した場合の扱いは?
A 無確認着工容認と同様、処分ランク4として扱う予定です。
 
Q 虚偽の中間検査・完了検査申請をした場合の扱いは?
A 虚偽の確認申請と同様、処分ランク6として扱う予定です。
 
Q 工事停止命令違反の扱いは?
A 是正命令違反と同様、処分ランク6として扱う予定です。
 
Q 何のために16分類と詳細に分かれているのか?
A 処分ランク表に基づく処分ランクを原則とし、情状・違反行為数・過去の処 分歴等に応じランクを加算するためです。
 
Q 複数の処分事由に該当する場合の扱いは?
A 原則として次のような扱いとする予定です。
   一つの行為が二つ以上の処分事由に該当する場合、又は手段若しくは結果で ある行為が他の処分事由に該当する場合は、最も処分の重い行為のランクによ り、二つ以上の処分すべき行為について併せて処分等行うときは、最も処分の
 重い行為のランクに適宜加重したランクとする。
 以上に、その悪質性・常習性等の情状が伺える場合は、さらに加重することと する予定です。
 
Q 工事監理者未定のまま施工するなど、建築士が関わらない違反については誰 が処分をうけるのか?
A 建築士の処分基準で定めるべき内容ではありません。建築基準法・建設業法 その他それぞれの法令等に従い、該当する者が処分等行われることとなります。
  なお、建築主や施工業者など、当該違反の責めを負うものが建築士でもあっ た場合や、建築士が、その違反行為を指導・幇助するなど共犯に当たる場合は、 建築士法第10条第1項第2号「この法律若しくは建築物の建築に関する他の法 律又はこれらに基づく命令若しくは条例の規定に違反したとき。」として、建 築士法上の処分を受けることとなります。
 
Q 建築士の懲戒処分のあった場合、建築士のみが処分されるのではなく、雇用 者等の監督処分もあることを明文化しほしい。
A 建築士法26条第2項第5号「建築士事務所に属する建築士が、その属する建 築士事務所の業として行った行為により、第10条第1項の規定により懲戒の処 分を受けたとき。」など、建築士が懲戒処分を受けた場合は、基本的に建築士 事務所も監督処分を受ける旨、建築士法上規定されております。
 
Q 建築士の処分の手続が、この処分基準案により変わるのか?
A 建築士の処分手続は建築士法等の法令に従い、行われておりますので、処分 手続自体は、変わりません。
 
Q 本基準自体は基本的に賛成であるが、その運用を厳格に行って欲しい、又は 緩やかに行って欲しい。
A 双方のご意見がございましたが、適正に運用していきたいと考えております。